ブラックボックス化するIT関連システム保守費

病院には未だ不適正なコストが多く存在している。それらコストの中には、馴れ合い・ブラックボックス化しており、手付かずのコストが多く見受けられる。多くの原因は、複雑であるため理解が難しいと思い込んでいること、そして専門性が要求されるがゆえに部門ごとに丸投げしていることと思われる。

一つの例としてシステム保守費が挙げられる。医療のIT化に伴い、院内のシステムは年々複雑化し、より専門性が要求されてきている。中部地方のA病院では、電子カルテの導入後、取引業者より5年間の情報システム総合保守費(常駐SE・その他複数のシステム含む)が提示された。最初に提示された見積金額は、4億5000万円強(年間9000万円強)で当初の想定金額をはるかに超える金額であったため、見積もり金額の適正化依頼があった。

システム保守費用の場合、詳細な内訳が提示されていないケースが多く、業者側も不透明さがあるために説明できない箇所が多く存在する。顧客からの依頼内容が膨らむ部分も想定して見積りを行うため、この様な状況が起こりがちである。不透明さをなくす対策として、病院側がシステムの利用状況・頻度・時間帯を把握し、保守内容・範囲といった仕様を明確にすることが必要である。次の段階として、見積の積算根拠となる内訳の提示を要求し、内訳を品目ごとに分解、さらに分解した品目ごとに市場調査を行う事が必要となる。この様な取り組みの結果、A病院のシステム総合保守費は年間6500万円まで削減することができた。

システムの複雑化、運用全般委託といった状況によりさまざまな面で業者への依存度は高くなっている。医療機関においては、長期間取引をしている既存業者から、無理な対応もお願いしていることも多く、仕様書では明確にし難い部分も存在する。そのようなブラックボックス化しているコストを一つ一つひも解き、コスト要素を明確にし、適正化することが、コスト削減へと繋がると思われる。

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