富裕層インバウンドはソーシャルインパクトボンドを徹底活用する

写真:©PAKUTASO
「ソーシャルインパクトボンド=Social Impact Bond(SIB)」とは2010年にイギリスで始まった民間資金を活用した官民連携による社会課題解決の仕組みをいう。社会課題解決のための社会的投資の動きとして世界的に一つの潮流を形成しているが、日本ではまだあまり聞きなれていない人も多いのではないだろうか。

SIBの組成に対する助成金や委託事業は、内閣府で研究グループが組織されたのを皮切りに、2015年から官民連携で社会的インパクト評価イニシアチブが結成され、100を超えるメンバー組織の加盟により、手法の深化やケーススタディの蓄積等が取り組まれている。2017年からは厚生労働省が開始し、他にも総務省や法務省でも取り組みが始められるほか、17年に閣議決定された「未来投資戦略」でもSIBの促進が盛り込まれるなど、行政における関心は高まっている。

日本でも2017年に2つの自治体で組成された。神戸市における糖尿病重症化予防2400万円、東京・八王子市における大腸がん検診976万円と小規模ではあるが、社会的投資推進財団等の財団や個人投資家以外に、三井住友銀行やみずほ銀行等のメガバンクが資金を提供したことで、日本においても社会的投資の主流化の可能性を提示した。

SIBの革新性は、成果連動型支払という事業の社会的リターンに連動した支払い方式にある。例えば、八王子市における大腸がん検診事業でのSIBでは、大腸がんの早期発見による医療費の削減が期待通りに実現すれば、事業費用976万円に対して1684万円の医療費適正化効果が期待されている。このように、民間がもつ革新的で生産性の高い事業を行政サービスに採用するように働きかけ、社会的サービスのイノベーションを進展させることが期待されている。こうしたSIBの仕組みを支えるのが、事業の社会的インパクト評価である。

現在は医療現場を中心に行われているSIBだが、日本と同様に保険制度を導入している国で採用される可能性を秘めている。その他、公共事業や福祉や街づくりなどで新たなSIBにも期待がされている。

例えば、戦前ユダヤ人に対して日本通過ビザを発給し、ユダヤ社会で最も知られている日本人杉原千畝氏関連の事業を国内展開する場合に、訪日ユダヤ人旅客に対して杉原氏関連のグッズを販売する資金調達の手段などとしても非常に有望ではないだろうか。

参照:Forbes Japan

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