2030年には年間18~20憶人が海外旅行をすると言われている。相対的に富裕層の海外旅行も増加傾向にあると推測することができる。日本の自治体の中にも、すでに訪日外国人富裕層旅行客を呼び込むための戦略を進めているところもあるが、日本全体で見ればまだまだ少ない。
中には、富裕層インバウンド戦略の重要性は理解していても、具体的にどうすればいいかイメージがしにくいという自治体もいるだろう。一方で外国人富裕層に話を聞くと「日本には行きたいと思えるラグジュアリーホテルがない」という答えが多く返ってくる。
たとえば、外国人富裕層からするば、1泊50万円でも本当に泊まる価値があるなら泊まるというのは普通の感覚だ。言い換えれば、彼らのニーズを満たすような宿泊施設、およびそれに付随するアクセス性の向上を図ることが、彼らを呼び込む具体的な方法論のひとつだと言える。
たとえば、ワインの中には1本数十万円もする高級ワインがあるが、必ずしも価値=おいしさではない。むしろ1本1万円の日本酒のほうがおいしいと感じる人もいるはずだ。重要なのはこのような価値の本質的な部分に気づくことだ。
その地域に長く住んでいると見逃がしがちだが、日本の地方には魅力的な文化や自然が多い。それらに価値を見出し、しっかりと外国人富裕層に伝えることができれば、その地方を訪れる方は出てくるだろう。
とは言うものの、なかなか魅力を伝える場がないのも事実だ。そこで、東京にある地方のアンテナショップや各都道府県の東京事務所などが連携して、地方の魅力を発信する基地機能を東京に設けるという施策が有益ではないだろうか。ユーロ・モニターの調査によると、東京は都市別外国人訪問者数ランキングで14位(日本の中では1位)であり、効果的に活用できれば地方への誘客に大きく寄与する可能性は十分にある。
しかし気を付けなければいかないのは、1泊50万円の高級ホテルを作れば必ず外国人富裕層が訪れるわけではないということだ。そこには外国人富裕層を対象とした調査に基づくしっかりとした裏付けが必要になる。富裕層向けの事業に参入するかどうかを判断するフェーズでコストをかけるのは一見無駄に思えるかもしれないが、もし安易に判断した結果最初の方向性が間違っていたら、計画を練り直さなければならないことにもなりかねない。そうなったら、それこそ時間やコストが無駄になってしまう。
今後の観光業界において富裕層市場を考えることが不可欠になりつつある。現在地域にどのようなコンテンツがあるのか、富裕層市場に参入するにあたって何を重視すべきかをぜひ一度考えていただきたい。
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